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”Proximal Stability for Distal Mobility”

モビリティとスタビリティ、これを聞いたことがない人は少ないかと思いますが、正しく理解されていないケースも多く見られます。モビリティとスタビリティに関するよくある誤解について、米国のケトルベル資格認定団体Strong Firstのシニアインストラクターであり、FMSのアドバイザリー ボードメンバー、主要なFMSインスタラクターであるBrett Jones (CSCS, ATC) が、”Proximal Stability for Distal Mobility”と題した分かりやすく解説している記事の翻訳版です。

”Proximal Stability for Distal Mobility”
https://www.functionalmovement.com/articles/Screening/757/proximal_stability_for_distal_mobility

FAQs – ”
モビリティ ファーストというFMSのコレクティブストラテジーと、遠位のモビリティを目的とした近位のスタビリティ”(”Proximal Stability for distal mobility”)というコンセプトをどのように調和させるのか、というのは、我々が受ける質問の中でも頻繁にあるものだ。

バックグラウンド
遠位のモビリティを目的とした近位のスタビリティ”(”Proximal Stability for distal mobility”)とは、MoresideMcGillが、股関節可動域改善に関する彼らの研究の中で言及したもので、その中では、近位のスティフネス(剛性・スタビリティ)向上を目的としたトレーニングは、股関節の可動域改善へ寄与したとしている(1)

Kibler
は、コアスタビリティのコンセプトの中で、次のように述べている。 コア周囲筋の活動は、スタビリティを生み出し、動作を作り出すために、事前にプログラムされた、ローカルな単関節筋と多関節筋のインテグレーション(統合)とすると、最もよく理解することができる。そしてこれは、遠位のモビリティのためのスタビリティ、つまり近位から遠位というパターンの力発揮と、遠位の関節を動かし、かつ保護する双方向性のインタラクティブなモーメントの創出となる。”(2)

遠位のモビリティを目的とした近位のスタビリティ”(”Proximal Stability for distal mobility”)というコンセプトは、PNF(proprioceptive neuromuscular facilitationKabatoKnottによって1940年台後半に考案されたコンセプト・手技)が始まりとされることが多く、事実、「至適なタスクまたは姿勢パフォーマンスを支えるために、体幹は有効な状態では、近位の適切なスタビリティまたは制御されたモビリティを提供する」(“in an efficient state the trunk provides appropriate proximal stability or controlled mobility to support optimal task or postural performance.”)と、関連する書籍の体幹の評価や治療に関連する部分に出ている(3)。しかし、制御されたモビリティ(Controlled mobility)が追加されていることに留意して欲しい。

FMS
は、ファンダメンタルな動作コンピテンシーに対してベースラインを作り出すために使用される7つの動作パターンである。これらの動作パターンは、ファンダメンタルな動作のモビリティ、スタビリティ、そしてファンクショナルな側面に焦点を当てる。ひとたび、スクリーンが実施された後には、FMSにはモビリティに優先順位を置くコレクティブ アルゴリズムまたはヒエラルキーが存在する。
そして、モビリティの制限は、固有受容感覚の入力を低下し、変化させることからモビリティパターンはFMSコレクティブヒエラルキーの中で優先される。Luis Mesquitaは、モビリティは認知・知覚(Perception)にとってとても重要なものであり、モビリティが低下した状態では、固有受容器からの求心性の情報はマイナスの影響を受け、認知(awareness)への低下へとつながるとしている。(4)

そして、ここから混乱が始まることになる。。。
(一見、矛盾するこれらの考えを)どうまとめればいいのか?
遠位のモビリティを目的とした近位のスタビリティ”(”Proximal Stability for distal mobility”)の解釈は、還元主義的な結論に至ることがある。つまり、スタビリティが優先事項であり、時によっては唯一ものとして。そして、FMSのコレクティブ ヒエラルキーも、モビリティが優先であり、独立したものであるという還元主義的な結論に至り得る。しかし、”Proximal Stability for distal mobility”というコンセプトは、独立したスタビリティ(Isolated Stability)やスタビリティ ファースト(Stability First)ということを暗示してはいない。

さらに、FMSのコレクティブアルゴリズムは、モビリティパターン(ASLRSM)を優先事項とするが、モビリティ オンリーを意味してはいないし、またスタビリティ不在のものでのモビリティを暗示してもいない。FMSは、パターン全体内のモビリティとスタビリティの両方を含んだ、動作パターンに着目しているのである。

ハムストリング テストと誤解されることが多いが)例にとれば、ASLRパターンはモビリティ パターンと呼ばれるが、一方の伸展がある中での一方の屈曲をコーディネートする後方・前方チェインのアクティベーションと骨盤股関節複合体のコントロールを含む(部分の)パターンも存在する。よって、ASLRでは、骨盤・股関節コントロール(スタビリティ)、後方チェインの制限、前方チェインの制限の改善を通じて、パターン内の問題に対処することが、ASLRへの問題の対処が始まりとなるかもしれない。そしてそれは、そのパターン全体やその部分への対処の始まりでしかなく、というのもASLRを変化させることとは、脚挙上をシングルレッグデッドリフトなどへの動作・活動へと再パターニングすることを含むからである。
よって、制限のあるASLRへの対処の鍵は、コアアクティベーションコアドリルを通じた骨盤のコントロールであったり、従来から行われているストレッチを意味することがある。そしてそれは、モビリティ(の制限)を破り、可動域を改善し、認知を改善し、後に続くモーターコントロール エクササイズが効果的になるために行われる。また、全ての人は異なり、その人の身体があるパターンの中でなぜ代償パターンを作り出すことになったのかという理由も異なる。よって、そのパターンを改善するコードも異なることなる。
FMSによるベースラインを使うことによって、(トレーナーとしての)自分が(そのパターンの改善において)正しい方向に進んでいるのか知ることができる。改善か起ころうが、起こらまいが、その進歩・改善の有無を知ることができるのは、ベースラインがフィードバックを与えてくれるからである。

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ショルダーモビリティスクリーンも、胸椎伸展モビリティとそのコントロール、肩甲帯のコントロール、肩関節の可動域と、上肢の相反リーチ パターン内でのコントロールを評価しているという点において同様である。肩甲帯のスタビリティとコントロールが鍵となる一方、そのスタビリティとコントロールは、胸椎と相互依存関係にある。よって、この場合もやはり、その個人が鍵となるのであって、近位のスタビリティモビリティなど、どれがそのショルダーモビリティパターンを改善するコードを破ることになるかはわからない。

よって、FMSは、遠位のモビリティを目的とした近位のスタビリティ”(”Proximal Stability for distal mobility”)というコンセプトと、よりよいプロプリオセプションとパターニングのためにモビリティ(パターン)が重要であるという考えを認識しているのである。一つの動作パターンへの解決策は、近位のスタビリティを完全に活性化することにかもしれないが、そのスタビリティは、モビリティに偏りのあるパターン内にあるかもいれない。

 

1. Moreside, J. M., & McGill, S. M. (2012). Hip joint range of motion improvements using three different interventions. The Journal of Strength & Conditioning Research, 26(5), 1265-1273.

2. Kibler, WB, Press, J, and Sciascia, A. The role of core stability in athletic function. Sports Med 36: 189–198, 2006.

3. Basmajian, J. V. (1993). Rational manual therapies. R. Nyberg (Ed.). Williams & Wilkins.

Chapter 11 page 259

4. https://btgap.org/2015/08/15/proprioceptive-training-are-you-really-improving-proprioception/

5. Voight, M. L., Hoogenboom, B. J., & Cook, G. (2008). The chop and lift reconsidered: integrating neuromuscular principles into orthopedic and sports rehabilitation. N Am J Sports Phys Ther, 3, 151-159.

6. Luciana Bahia Gontijo, Polianna Delfino Pereira, Camila Danielle Cunha Neves, Ana Paula Santos, Dionis de Castro Dutra Machado, and Victor Hugo do Vale Bastos, “Evaluation of Strength and Irradiated Movement Pattern Resulting from Trunk Motions of the Proprioceptive Neuromuscular Facilitation,” Rehabilitation Research and Practice, vol. 2012, Article ID 281937, 6 pages, 2012. doi:10.1155/2012/281937