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傷害予防、FMS、チームパフォーマンス

今季のUEFAチャンピオンズリーグ決勝を戦うトッテナムとリヴァプール。

チームの成績と傷害予防は、関係はあるのか?

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"プロサッカーにおいて、傷害はチームパフォーマンスにマイナスの影響を与える- 11年間の欧州チャンピオンリーグ傷害追跡調査 -" (Injuries affect team performance negatively in professional football: an 11-year follow-up of the UEFA Champions League injury study.)と題した研究(Hägglund M et al. 2013)は、競技スポーツにおける傷害が、チームの成績に及ぼす影響を示しています。

 

この研究では、欧州9か国24チームを11年間にもわたって追跡調査を行った結果として、傷害の重症度(Injury burden)が低いことと、試合出場可能性・アベイラビリティ(Match availability)が高いことは、リーグ戦におけるチームの成績と相関があることを示唆しています。

同様に、傷害発生件数が少ないこと、傷害の重症度の低いこと、試合出場可能性の高さは、チームの勝ち点の増加と相関があることも示唆しています。

(傷害の重症度と試合出場可能性・アベイラビリティの定義については、文末を参照)

 

傷害の重症度という観点では、スポーツは異なりますが、プロのアメリカンフットボールを対象とした別の研究では、FMSのトータルスコアを一つの指標とした研究があります(Kiesel K. 2007)。

この研究では、FMSのトータルスコアが14点以上のアスリートに対して、13点以下のアスリートは、3週間以上の欠場を要する傷害を受傷するリスクが11倍高かったことが報告されています。

つまり、FMSのスコアが低い選手は傷害を負った場合でも、重症化・長期化するのに対し、FMSのスコアが高い選手は軽傷ですむ、つまり動作のクオリティが回復力(Resiliency)に対して持つ価値を示唆しています。

これはFunctional Movement Systems社内でもつ、未公表データとも一致する傾向です。

 

 

傷害の発生因子は複合的であり、「傷害のリスクを軽減すること」=「傷害を予防すること」ではなく、その解釈には注意が必要となりますが、より良い骨格筋・神経筋システム、動作パターンに対する包括的な評価、介入モデル/システムを持つことの重要性は、身体部位の相互依存性(Regional Interdependence)を持ち出すまでもなく、疑いの余地がありません。

 

 

前述したリヴァプールを含む欧州、北米、オーストラリアなどのプロサッカーのトップリーグ44チームのメディカルスタッフに対して、傷害予防策を調査したユニークな研究(McCall A et al. 2014.)があります。

その中で、非接触型の傷害リスクを評価するツール(Tests used to detect injury risk)として、FMSが最も多くのチーム(対象となった44チーム中36チーム、80%)に使用されていることが報告されています(FMSの次には、問診とアイソキネティックテストとされています)。

また、この調査の対象としたメディカルスタッフの考える傷害リスクの重要性(Perceived importance of non-contact injury risk factors)は、回答が多かった順番に、既往歴、疲労、筋インバランス、フィットネス、動作効率性と報告されており、既往歴を除く4つは介入が可能なものとなります。

 

 

今回は、サッカー、アメフトに関する研究をご紹介しましたが、様々な競技スポーツ、そして様々なレベルのスポーツと運動に関する研究・エビデンスで、FMSの有用性は実証されています。

より多くの競技スポーツの傷害予防に、そして医療機関、治療院のリハビリテーションにおいて、骨格筋・神経筋システム、動作パターンに対する包括的な評価、介入モデル/システムであるFMS/SFMAが導入していただければ幸いです。

 

 

 

傷害の重症度(Injury burden)・・・(傷害1件あたりの平均欠場日数 x 傷害発生件数)

試合出場可能性(Match availability)・・・(試合数 x チーム所属選手)- 傷害・疾病による選手の欠場数

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参考文献

Hägglund M et al. Injuries affect team performance negatively in professional football: an 11-year follow-up of the UEFA Champions League injury study. Br J Sports Med. 2013 Aug;47(12):738-42.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23645832

 

Kiesel K, Plisky PJ, Voight ML. Can Serious Injury in Professional Football be Predicted by a Preseason Functional Movement Screen? N Am J Sports Phys Ther. 2007 Aug;2(3):147-58.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21522210

 

 

McCall A et al. Risk factors, testing and preventative strategies for non-contact injuries in professional football: current perceptions and practices of 44 teams from various premier leagues. Br J Sports Med. 2014 Sep;48(18):1352-7.