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運動・エクササイズのサービス提供のSOP

 

下記の記事は、”Less or More or Enough: How Much Information Do You Need?”と題したFMSインスタクターであるブレット ジョーンズ (ATC, CSCS)による記事です。

クライアントに対してサービスを始める際のSOP(標準操作手順、Standard Operating Procedure)とFMSについて書いています。

 

我々が運動・エクササイズに基づくサービスを提供する際に行うべき手順、収集すべき情報とは?

 

 

ひょっとしたら、ビッフェスタイルの食事が批判されるべきなのかもしれない。または我々の過ごしているオンディマンド型の生活スタイルかもしれない。

移動?Uber

食事? Uber eats

映画? リモコンのボタン

すべて私たちの指先にある。あれはいいけど、これは嫌。日々、見るもの、すること、さらされるもの全てを選ぶことができる。

 

 

えり好むすることには、そのマイナスもある。私達の中には、アルバムのB面が、“45”の最高の部分だったということを覚えている人もいるはず(意味がわからないという人は、Googleで調べてみよう)。

今日風に擬えれば、iTunesで曲を選んでいるうちに、偉大なアルバムを聞き逃すようなものだ。

えり好みすることは我々の生活の全ての側面に入ってきている。SOP(標準操作手順)のように。

新規クライアントへの対応もSOBによってコーディネートされるべきである。

免責事項への同意 – ✔️

健康に関する問診 – ✔️

Par-Q – ✔️

支払い方法 – ✔️

ムーブメントスクリーン – まぁ1・2個チェックすればよし。

 

SOPに基づいてすすめるのではなかったのか!?

すこし脱線してみよう。

 

書籍“Why We Make Mistakes”(邦題「しまった! 「失敗の心理」を科学する」)の中で著者のジョゼフ・T・ハリナンは、競馬の予想屋に関する逸話を共有している。ある研究の中で、プロの予想屋は、最小で5つ、最多で40もの情報(馬場状態、天候、馬の年齢etc)を与えられた。情報の増加とともに、予想の正確性が向上すると思うかもしれないが、それは間違っている。この研究では、5 つの情報が与えられた時の予想屋の正確性は、40の情報を与えられた時と同じだったのである。

そう、あたなの読み違えではない。

 

5つの情報だけで、40の情報と同程度に、正確だったのだ。しかし、ここで一つ重要な情報のパズルがある。予想屋の自信レベルは、情報の数の上昇とともに、上がったということだ。

 

より少ない情報で等しく正確であるにもかかわらず、情報が増すにつれ、自信が増す。

人間の性とは、より多くの情報がよりよいこと推測してしまうのだろう。

 

そして、逆も真実であるはず。いくつかの情報だけで、我々が必要な全ての情報を提供してくれるとみなすこともできるはず。自信は両方向にありえるもので、我々は、仮定に影響を受けるものだ。

 

仮定とSOP

 

SOPの中では、えり好みは機能しない。理由があってスタンダード化されているのである。書籍”The Checklist Manifesto”(邦題「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」)の中で著者アトゥール ガワンデは、WHOのプロジェクトの中で外科手術後の感染症予防のためのSOPの策定にまつわる逸話をシェアしている。

外科手術後の感染を予防する最良の方法は、術前45分前に多薬効範囲を持つ抗生物質を投与することである。しかし、このプロジェクトを通じて、これ手続きが行われていないことが明らかになった。経験のある医師や看護師が、45分前に抗生剤を投与していなかったのである。そしてSOPを遂行するためのチェックリストを推進することで、抗生剤がそのタイミングで投与され、術後の感染率は低下したのだ。

重要な点は、経験を積んだ看護師や医師が、えり好みするのではなく、SOPに則ることで、術後の感染を減少させることに効果的であったということだ。チェックリストとSOPは、人の創造性や経験を取り除くことを意図しているのではなく、仮定や推察から人を守ることを意図していることを理解しよう。医療資格者がSOPから恩恵をうけたように、あなたも恩恵を受けるだろう。

 

さて、どちらなのか?より多く?または少なく?5つの情報か、SOP、、、または?

SOPによってカバーされた適量の情報が、十分だろう。

FMSが考案された時、グレイ、リーとその他の考案者たちが、それは、動作関する必要不可欠な情報量に絞りこまれた。左右対称なスタンス、片脚スタンス、スプリット(左右非対称)スタンス、上半身のモビリティ、下半身のモビリティ、左右対称性のスタビリティ、左右非対称なスタビリティと、これらに関連するクリアリングテストが、我々が必要とする動作の質に関する必要不可欠な情報として選ばれたのである。

 

競馬の予想屋がより多くの情報で自信を増したように、または医療関係者がSOPを無視していたように、なぜ、人は情報を多くしたり、または少なくしたりするのだろう?“十分な情報”で行うことがいいのではないだろうか?

 

ちょっと待ってくれ。修正FMS?

みなさんの意識が修正FMSに向くかもしれない。修正FMSは、データに基づき決定されたもので、通常のFMSへの道を修正FMSが整えてくれることが示唆されたのである。

 

 

 

「すべての数えられるものが大事なわけでもなく、大事なものがすべて数えられるわけでもない」

("Not everything that can be counted counts, and not everything that counts can be counted." )

アルバートアインシュタイン

 

ムーブメントスクリーンに話を戻そう。

 

エクササイズ・運動を始める上でのSOPは、疼痛のあるパターンと、完全にアクセスできないパターンを識別しようと試みるべきである。(FMSの7つ)より少ないスクリーンを実施しようとすれば、これらのエリアについて、より少ない情報を集めることになる。

動作はパターンに基づく(Movement is pattern dependent)。左右対称のスタンスで、疼痛がなく、問題がないことは、片脚立位で疼痛と制限がないことを意味しない。スクリーンと関連するクリアリングテストを端折ることは、情報の中のギャップを生み出す。

 

ディープスクアットだけを実施する?それはスプリットスタンスにおける疼痛の可能性を見逃すことを意味する。ところで、そのクライアントのトレーニングプランに何が含まれているのか?ランジ。疼痛を発見する最良のタイミングではないだろう。

 

TSPUを端折る?伸展クリアリングやTSPUで1の可能性を見逃すことを意味する。そのクライアントのトレーニングプランに何が含まれているのか?ケトルベルスイング。やはり、疼痛を発見する最良のタイミングではないだろう。

 

よって、問いは、次のようになる。 あなたは何を見逃したいのか?

 

しかし、FMSは全てをカバーするわけではない。

FMSは全てをカバーするわけはなく、また全てをカバーすると主張もしてない。しかし、全ての関節を自動、他動で評価し、単関節の筋力を評価し、その後いくつかのスペシャルテストや手順を踏むことは、多大な時間を必要とするだけでなく、前述の競馬の予想屋の“うさぎの巣穴”に落ちるようなものだ。より多くの情報は、より強い自信にはなるかもしれないが、より高い正確性にはならない。

 

人の脳や身体は、独立・孤立しては、思考せず、行動もしない。だからこそ、現在の動作・行動を捉えることが、我々が始める時に必要な情報を提供する。

 

そして再び、問いは次のようになる。あなたは何を見逃したいのか?

 

 

 

株式会社Function追記

文中に登場するWHOの推奨する外科手術に関する感染事故防止のためのチェックリストはこちらににあります。英語など6ヶ国語に翻訳されています。極めてシンプルな20のチェックリストから構成されており、このチェックリストを確認することをSOPとして行うことで、有意に術後の感染症を予防できることが証明されています。

https://www.who.int/patientsafety/safesurgery/checklist/en/

 

また、その論文はこちらです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19144931