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身体部位の相互依存性とパフォーマンスへの制限因子 Part 2

 

 

 

 

 

「身体部位の相互依存性とパフォーマンスへの制限因子  Part 2」(”Regional Interdependence And Limiting Factors To Performance Part 2” By Greg Dea)

 

前回の記事において、FMSで明らかになった足関節痛を持つクライアントに関連して、なぜそれが垂直飛びのパフォーマンス低下の原因となったり、それにパフォーマンス低下に寄与したり、またはそれを複雑化させるかということを明らかにした。

 

前回の記事は、パフォーマンス不足の原因に関する推測を排除するというスポーツ科学的なアプローチを強めることを目的とした。パフォーマンスに対するこのような”サイドブレーキ”を明らかにするシステムの基盤となる中心的なコンセプトは身体部位の相互依存性(Regional Interdependence)である。このコンセプトは、Functional Movement Systemsにとって重要なものである。モーターコントロール異常と合わせ、これら2つのコンセプトは、ランニングや跳躍を伴うスポーツにおいて極めて重要なものであるとされている。さらに、ランニングや跳躍スポーツのパフォーマンスにおいて、モーターコントロールは大きな制限因子であることが示されている。運動学習の専門家であり、スプリント・ジャンプコーチとして尊敬を集めるフラン・ボッシュもそのような考えを提示している。この記事では、SFMA・FMSの認定資格者が、どのように身体部位の相互依存性というコンセプトをFCSやその他の特異的なキャパシティテスト、スポーツパフォーマンスへとつなげるのか、という問いをサポートしながら、パフォーマンスに対する制限を説明する第二の大きな理由に関する探求を続ける。

 

最初の記事からの繰り返しとなるが、同じパフォーマンス上の目的 – 垂直跳びの改善 – をもって、4人のクライアントが私の施設を訪れた。Jenny、Joe、Bella、Bradの4人は全員、バスケットボールやバレーなど、跳躍を伴うスポーツをプレーしている。これを読んでいる皆さんの中で、彼らに対して同じジャンププログラムを提供している人はどれくらいいるだろう?多くの人がそうするだろう。そしてそれは、Functional Movement Systemsのもとに、そのフィロソフィーを信じる人がまとまる前までは、多くの人にそうであった。我々は異なるバックグラウンドや方法論に由来を持つが、システムやロジックが科学的であり同時に現実的な簡略性があるときには、それに従うものである。

 

この 4人の評価は異なる診断となった。一人は疼痛、一人はモビリティー機能不全、一人はモーターコントロール機能不全、最後の一人はパフォーマンスの不足である。

 

Jenny - 機能的・疼痛

Joe - モビリティー機能不全

Bella - モーターコントロール機能不全

Brad - フォーマンスの不足

 

この情報を元にしたとき、どれくらいの人が、この4人のクライアントに同一のジャンププログラムを提供するだろうか?スポーツ科学において、我々は可能なかぎり推測を避けたい。よってそれぞれのケースにおいて、垂直跳びを制限しているものを明らかにすることができたならば、簡単に推測を排除することができる。これを簡単に実行する一つの方法は、疼痛とモビリティ、モーターコントロール機能不全に対処した上で、垂直跳びを再評価することである。そうすることで動作・ムーブメントの問題の垂直飛びに対する影響か、またはその影響がないことを確認することができる。

 

この記事では、Joeに焦点を当てる。 

 

Joeは、疼痛を伴わない左足関節の制限を持っている。なぜ、背屈制限が垂直飛びのパフォーマンスの問題を引き起こしたり、または寄与したり、少なくとも複雑化させるかを理解することはとても重要である。

 

この背屈パターンにアクセスすることが困難なことは、垂直飛びにとって、事前のローディングの因子、または複雑化させる要因であるかもしれない。簡単な先行研究のレビューにおいても、足関節の制限(背屈と底屈)が、カウンタームーブメント ジャンプ、スクアット、ステップダウンや着地動作などの下肢のトリプル フレクション課題上のキネマティクスとモーターコントロールに影響を与えるかということが明らかとなる。さらに、背屈動作パターンにアクセスすることが困難な時、足関節に対する傷害のリスクを上昇させることも明らかである。

 

足関節背屈が制限されているとき、両側性のスクアットにおいて、膝関節外反、膝関節内側変位、四頭筋の発火減少、ヒラメ筋の発火増加がおこることが示唆されている(Macrum, Bell, Boling, Lewek, & Padua, 2012)。これはジャンプにマイナスの影響を与えるだろうか?

 

さらに、足関節背屈制限は、ステップダウン動作のようなその他のトリプル フレクション課題において、キネティックチェイン上の影響を与えることも示唆されている (Bell-Jenje et al., 2016) and landing (Begalle et al., 2015; Fong, Blackburn, Norcross, McGrath, & Padua, 2011; Hoch, Farwell, Gaven, & Weinhandl, 2015; Malliaras, Cook, & Kent, 2006; Mason-Mackay, Whatman, & Reid, 2017)。

 

視野をさらに広げてみよう。Joeの背屈の可動域制限が、底屈にもあったとしたらどうだろう。それが垂直飛びに影響を与えるだろうか?先行研究では、底屈モビリティの制限は、必要とされる力の膝関節への再配分と関連があることを示唆している(Arakawa, Nagano, Hay, & Kanehisa, 2013)。さらに、カウンタームーブメントジャンプのテイクオフ時において、肩関節のパターニングと共に、底屈が使用される程度は、大きな出力・アウトプットを占めていることも示唆されている(McErlain-Naylor, King, & Pain, 2014)。

背屈制限は、背屈対底屈のストレングス比で測定される力発揮に影響を与えるかもしれない。つまり、小さな背屈:底屈比は、内販捻挫の発生件数と関連があることが示唆されている(Baumhauer, Alosa, Renstrom, Trevino, & Beynnon, 1995)。背屈制限は、オーストラリア陸軍における研究で、傷害に対する強い予想因子であることも示唆されている(Baumhauer, Alosa, Renstrom, Trevino, & Beynnon, 1995)。さらに、バレーボール選手において背屈制限は膝蓋腱症との関連が示唆されている(Malliaras et al., 2006)。

 

 

足関節の機能不全のために、足関節から得られるべき力を利用しないことは、サイドブレーキが効いた状態で車を走らせることに似ており、故障へとつながる可能性があり、少なくともパフォーマンスに影響を与える。

 

これはパフォーマンスの分野で頻繁に出来事であるが、Joeに見つかった足関節のモビリティーの情報を迂回し、より高いレベルのテストへと移行したとしよう。つまり、我々がアスリートに課すタスクにとってファンダメンタルな前提条件をアスリートがクリアする前に、その課題へと進むことである。下記に記したJoeのFCSの結果を見ると、我々が問うべき問いは、以下のようなものである。

パフォーマンス上の数値が、予期・期待される数値よりも低いとき、これらの低い数値が、機能的な問題を増大させているのか、またはこれらは、機能的、構造的なノイズのない、独立したパフォーマンス上の問題なのか?

 

モビリティに関して言えば、パターンの至適な発揮のために、身体の部位が動作の開始と終了の姿勢・肢位に適応するために必要な可動域が存在するとき、モビリティのテスト上のコンピテンシーは存在していると言うことができる。それらの姿勢・肢位とパターンが、効率的なパワーをサポートする。Joeは適切な可動域を持っていなかったのである。不適切なレベルの可動域とモビリティは、関節や組織の肢位に関する求心性の情報の検知にマイナスの影響を与える。不十分な求心性のインプットは、至適なレベルよりも低い力発揮、力の吸収や弾性的な再利用として現れる不十分な遠心性のアウトプットへとつながる。これはパフォーマンスの欠損である。

 

 

Joeは私の施設に垂直飛びを改善するという目的をもって来たとしても、それがどのように見えるか、どの方向に飛んでいるかではなく、何を明らかにするかという観点から、水平方向への幅跳びが機能的なテストとなる。そして、幅跳びでは、垂直飛びよりも、足関節からのアウトプット・出力が求められ、より感度の高いテストとなっている(Robertson & Fleming, 1987)。FCSは、Joeの左足関節がいかに跳躍動作における力発揮、力保存、そしてその再利用の低下に寄与していることを表している。これは、片脚跳びと2:1:2ジャンプに表れている。

 

 

片脚ジャンプでの8.5%での左右差と、左の2:1:2のエネルギーの漏れから、左脚が水平方向への力発揮、エネルギー保存、再利用にいかに使われていないかということがわかる。8.5%は、大した差には大きくないように感じるかもしれないが、スポーツ動作は問題を問題を複雑化させる。

 

 

足関節のモビリティが大きく制限されているとき、それがどのようにスクアットにおける膝のキネマティクスと筋の発火に影響をあたえるかということにはすでに言及してきた(Macrum et al., 2012)。これらの変化は、跳躍動作にとっても重要だろうか?少なくとも一つのリサーチはそうであると示唆している。幅跳びと垂直跳びにおいて、足関節はそれぞれ約50%と36%の力を提供している(Robertson & Fleming, 1987)。これらを踏まえると、Joeのモビリティの欠損は、実際にパフォーマンス上の欠損に寄与している可能性があるのである。よって、実際にそれに対処するまで、それが影響を与えていないと推測することはできないのである。機能的な問題を端折り、より高いレベルのテスト法へ進める考えは間違っており、我々の方法の妥当性が証明されていると考えることができる。我々がアスリートに課しているタスク・課題を身体が実施できることを確認する必要があるのである。

 

 

再び、同じ問いを考えてみよう。パフォーマンス上の数値が、予期・期待される数値よりも低いとき、これらの低い数値が機能的な問題を増大させている(判別している)のか、またはこれらは、機能的、構造的なノイズのない、独立したパフォーマンス上の問題なのか?

 

 

ファンダメンタルな機能不全を明らかにすることで、我々がなぜ、クライアントの目的に基づく問題対処法を提供しないかということを明らかにした。上のクライアントは全て同じ目的を持っている。垂直飛びを改善するゴールを持つということは、彼らが自分の希望する高さまで跳ぶことに問題を抱えているということを証明している。この目的に対し、ジャンプをプログラムすることでトレーニングすることは、疼痛を持っていたり、重要なパターンにアクセスすることができない人にとっては、プライオリティとはならない。疼痛を持っているとしたら、そのクライアントは患者であり、垂直飛びの欠損を持つ機能不全のアスリートではない。コンピテンシーレベル以下となるモビリティに大きな制限があるとしたら、しかし垂直飛びの欠損を持つ機能的なアスリートではない。そのクライアントは、垂直飛びを支持する鍵となる要素にアクセスできない、不十分な機能を持つアスリートである。

 

 

我々は重要な結果に到達したことになる。それは、我々が垂直飛びのワークアウトで楽しませることに対してクライアントはお金を払うのか、または彼らがゴールを達成するために、お金を払っているのか、ということに関係する。もちろん、いずれも重要な点だが、我々はクライアントが価値を感じるものを提供する必要がある。何故ならこれは我々のビジネスであるからであり、さらに我々は”針を動かした”ことを示す必要もあるからである。つまり、反応を引き出し、前進のための障壁を取り除いたことを示す必要がある。

 

 

針を動かすことは、クライアントが属するカテゴリーを知ることから始まる。そして、これは、針がどこから始まるかを意味する。そのために、我々は彼らが属するカテゴリーを明らかにする評価を用いる。そのカテゴリーは、パフォーマンス、機能または健康と関係するかもしれない。スクリーンとは、初めにカテゴリーに振り分ける一連の測定であり、その分類・カテゴリーに付随した一定のチェックリストをもつ。より簡潔に言えば、スクリーンとは、ヘルス・健康をアセスメントすべきか、最低レベルまでの機能を回復させるべきか、またはパフォーマンスを測定すべきか、我々に示してくれるものである。テストでは、失敗から最高値までの分布または一定の範囲の能力が示される。そのテストの中に、そのカテゴリーが適切なものか判断する確認作業がある。

アセスメントとは、傷害や疼痛に対して情報を提供してくれる。JennyとJoeに対しては、スクリーニングとアセスメントが、跳躍の制限因子がそうでないと明らかになるまで、疼痛と制限のあるモビリティであることが明らかにする。

 

 

参考文献

Arakawa, H., Nagano, A., Hay, D. C., & Kanehisa, H. (2013). The effects of ankle restriction on the multijoint coordination of vertical jumping. J Appl Biomech, 29(4), 468-473. 

 

Baumhauer, J. F., Alosa, D. M., Renstrom, A. F., Trevino, S., & Beynnon, B. (1995). A prospective study of ankle injury risk factors. Am J Sports Med, 23(5), 564-570. 

 

Begalle, R. L., Walsh, M. C., McGrath, M. L., Boling, M. C., Blackburn, J. T., & Padua, D. A. (2015). Ankle Dorsiflexion Displacement During Landing is Associated With Initial Contact Kinematics but not Joint Displacement. J Appl Biomech, 31(4), 205-210. doi:10.1123/jab.2013-0233

 

Bell-Jenje, T., Olivier, B., Wood, W., Rogers, S., Green, A., & McKinon, W. (2016). The association between loss of ankle dorsiflexion range of movement, and hip adduction and internal rotation during a step down test. Man Ther, 21, 256-261. doi:10.1016/j.math.2015.09.010

 

Fong, C. M., Blackburn, J. T., Norcross, M. F., McGrath, M., & Padua, D. A. (2011). Ankle-dorsiflexion range of motion and landing biomechanics. J Athl Train, 46(1), 5-10. doi:10.4085/1062-6050-46.1.5

 

Hoch, M. C., Farwell, K. E., Gaven, S. L., & Weinhandl, J. T. (2015). Weight-Bearing Dorsiflexion Range of Motion and Landing Biomechanics in Individuals With Chronic Ankle Instability. J Athl Train, 50(8), 833-839. doi:10.4085/1062-6050-50.5.07

 

Macrum, E., Bell, D. R., Boling, M., Lewek, M., & Padua, D. (2012). Effect of limiting ankle-dorsiflexion range of motion on lower extremity kinematics and muscle-activation patterns during a squat. J Sport Rehabil, 21(2), 144-150. 

 

Malliaras, P., Cook, J. L., & Kent, P. (2006). Reduced ankle dorsiflexion range may increase the risk of patellar tendon injury among volleyball players. J Sci Med Sport, 9(4), 304-309. doi:10.1016/j.jsams.2006.03.015

 

Mason-Mackay, A. R., Whatman, C., & Reid, D. (2017). The effect of reduced ankle dorsiflexion on lower extremity mechanics during landing: A systematic review. J Sci Med Sport, 20(5), 451-458. doi:10.1016/j.jsams.2015.06.006

 

McErlain-Naylor, S., King, M., & Pain, M. T. (2014). Determinants of countermovement jump performance: a kinetic and kinematic analysis. J Sports Sci, 32(19), 1805-1812. doi:10.1080/02640414.2014.924055

 

Pope, R., Herbert, R., & Kirwan, J. (1998). Effects of ankle dorsiflexion range and pre-exercise calf muscle stretching on injury risk in Army recruits. Aust J Physiother, 44(3), 165-172. 

 

Robertson, D. G., & Fleming, D. (1987). Kinetics of standing broad and vertical jumping. Can J Sport Sci, 12(1), 19-23.